消えてしまったつるべ落としの話

祖母の昔話にちょろっと出てきた話。

曽祖母が幼かった祖母をおんぶしてあやす時に

「儂(わし)はおとろし、里外(りゅうげ)の宮に、つるべ落としがいるといな」

大体の意味は、

「私は恐ろしい。里外神社に、つるべ落としがいるそうな」くらいの意味の、都々逸風かと思うけれど、これは俚謠らしい。盆踊りの唄かと思う。

おぶさりながらこれを聞いた時、祖母は、

「お母(か)よ、つるべ落としてどんなバケモンえー?」

と、聞いたらしい。その時曽祖母は、背中におぶっている娘に聞かれて、こう答えた。

「秋の日は釣瓶落とし言うてな、昔は暗なるのは一番おとろしかったんえー」

これが祖母の一番古い記憶…。

里外神社は南海本線の岡田浦の駅近くにある神社である。

この神社にお参りに行った時、神主さんにつるべ落としの事を聞いてみた。すると神主さん、

「つるべ落としって何の事です?」

と、逆に聞かれた。

子供の頃水木しげるにハマっていた私にとってはショック。

消えてしまった民間伝承らしい。