嗚呼!逆効果!
美味しいと言ったら毎日毎日同じものを作る祖母が、
私たちが苦労が足りない、だから、昔の苦労を偲ぶためとして、半分嫌がらせのつもりで、戦時中に作ったという、サツマイモの茎(地下茎ではありません!地下茎はサツマイモ)のお浸しを作った事があった。
かなり作るのが面倒な食べ物である。細い茎の皮を剥くという作業、お昼過ぎから悪戦苦闘して、夕方頃やっと家族分剥きあげ、お浸しにした。
父は筋金入りの野菜嫌い、私は幼児の頃は野菜嫌いだったが小学生になってから、親に似合わぬ野菜好き。
不味いものの代表のように思って祖母が作ったサツマイモの茎のお浸し
は恐ろしく美味だった。
そしてお代わりはなかった。
「美味しい、おばあちゃんまた作って」
私は思わず言ってしまった。
父は私の口を塞ぎたい、ついでに息の根も止めて遣りたいと思ったことであろう。でも後の祭り。
祖母は明くる朝何処かに出かけた。お昼前、近所の親戚のお婆さんがやってきた。
このお婆さんの名前は松さん、うちのがタケさん、大の仲良しである。
この二人、婦人会があるのに別に松竹会という組織を立ち上げて、村中の婆様をオルグして回り、婦人会、敬老会と並ぶ第三の組織を作り上げた。
敬老会というのは宮座の十人衆の成れの果て、爺様方の集まり。大学時代、村落社会学のレポートで扱った記憶がある。閑話休題
松とタケの関係は松が姉御でタケが妹分、松さん来訪の趣旨はサツマイモの茎の件、
つまり、サツマイモの茎のお浸しは毎日は無理だという、祖母からの伝言である。私は了承して、一件落着。勝利であった。
これからは思いっきり手間のかかるものを祖母が作った時はねぎらいのため、
「美味しいね!」
二三日かかるものは大絶賛することにした。
嗚呼!逆効果!の巻これにて終了。